2019年08月10日 夕方公開終了

文=星野文月

ユウキさんにカメラマンとの仲を疑われている。
twitterでちょめさんがアップした私の写真を見つけたらしく、そのスクリーンショットが送られてきた。
ユウキさんは、どうやら私のアカウントだけでなく、私の友達や、写真を撮られたことがあるカメラマンの投稿まで見ているみたいだ。ちょっと怖い。

「ちょめとやったの」と突然LINEが来てびっくりした。
もちろんそんなことは一切ないが、ちょめさんが撮った写真は確かに親密そうに見えた。お互いを信頼しているからこそ撮れる写真だった。だからこそ、そんな関係になることは絶対にないのに。
どうにかそのことをわかって欲しくて、なるべく簡潔に文章を作って送る。少しすると「と言うと?」と返信が来る。それ以上説明をすることはなかったが、さらに噛み砕いて文章を送る。
「ちょめさんはただの友達。結婚もしている。やってない」
一番わかって欲しかったことは、そんなことじゃなかった。
ユウキさんから「もういいよ」と返事が来た。脱力感に襲われて、その場にしゃがみ込んでしまう。写真だけは邪魔されたくない……。

ユウキさんが倒れてからの数か月は生きている心地がしなかった。毎日泣き、目は腫れ、顔もやつれていた。そんな姿でも、写真を通して自分のことを確認できるととても安心した。写真に切り取られた瞬間は自分が生きている証拠だ。それらは私の大切なお守りとなった。
「いつか見返して、笑えるようになりたい」
その気持ちだけがすべての原動力だった。
ユウキさんにわかって欲しくても、言葉が伝わらない。しかし、私には言葉しか伝える術がない。大きく息を吸って、ゆっくりと吐く。伝えたいことが伝わらないということは、こんなにも悲しいものなのか。(つづく:8/12更新、私の証明71-「一二月二日」)

星野文月(ほしの ふづき)

1993年7月20日生まれ 長野県出身言葉を書く。
https://twitter.com/fuzukidesu1