落ち着いた生活を取り戻す おまけ-人間関係の強制リセット法

2018年04月12日 夕方公開終了

文=大原扁理

服や本などのモノのほかに、気がつくと増えてしまうのが人間関係です。

あまりに増えすぎると、本当は誰が大事で誰がそうでもないのか、優先順位がわからなくなってしまいますよね。かといって、連絡帳先を開いてひとりずつ吟味して整理していくのも面倒くさい。

ズボラな私が今まで、人間関係の強制リセットにいちばん効果的と感じたのは、「ケータイを持つのをやめること」です。

以前にも少し触れましたが、ここではもう少し詳しく書いてみます。

ケータイが普及してから、私があえてケータイを持たなかった時期が2回あります。
1回目は高校卒業後、ひとりでいるのが楽しすぎて人間関係を断絶した3年間。そして2回目は、上京後に隠居をはじめてから出版に至るまでの4年半です。
1回目のときはまだ実家に住んでましたので、ケータイのかわりに家の固定電話を使っていました。そして2回目は、引っ越し先のアパートにネット回線を引くときに、たったのプラス500円で固定電話を設置。
もともと社交的ではないので、ただでさえ人より交際量は少なかったのですが、このタイミングを境に、周りから人が波のように引いていくのがわかりました。

ケータイを持っているときには慣れてしまってわからないのですが、誘いを断ることもさることながら、連絡を受けるだけでも、もっと言えばいつでもどこでも連絡される状態自体が、微妙にストレスなんですよね。とくに料理中や、歯を磨いているときなんかにケータイに電話がかかってきて、作業を中断して電話に出たのに、こちらの都合も聞かずにいきなり用件を話し始める人なんか、もう腹が立ってきます。私はこういう人を、仲がいいとか、関係が深いとは思いません。
それが固定電話にしただけで、連絡する際の心理的なハードルが一段階上がるのか、大した用事でもないのに電話がかかってくることが劇的に減りました。そういえば私も、固定電話に電話をかけるときは、失礼にならないように、はじめのあいさつとか第一声を、頭の中で用意していたものでした。

このハードルを越えてまで連絡をくれる人だけが、のちのちまで残っていく人です。逆にいえば、ケータイを持っていないくらいで離れていくのは、それまでの人。実際、長い付き合いの友人たちは、私がケータイを持っていなくても、台湾に住んでいても、ときどき思い出したように何かの手段で連絡をくれることがあり、東京に限らず世界中のいろんな場所で会います。残っていく人は、体感としては10人のうち1~2人くらいでしょうか。

要/不要をひとりずつ確かめていたら膨大な作業になってしまいますが、ケータイを持っていないだけで勝手に人間関係が淘汰されていくなんて、こんなにラクなことはありません。

ただ、私のように数年という単位で持たないとなると、それはそれで弊害もあったりします。たとえば私はケータイを持っていないというだけで、にべもなくアルバイトの面接で落とされたりしました。
しかし、ここで落とし穴なのは、「ケータイを持たないこと」が目的ではない、ということです。
私もさすがにケータイを持たないと生活費も稼げない状態になれば、柔軟に対応したと思います。

まあそんなに重苦しく考えなくても、自分にとって本当に大切な人を見極めて、限られた時間のうち、その人たちのために使う分量をより多くしてみよう、くらいの感覚で大丈夫。

大原扁理(おおはら・へんり)

1985年愛知県生まれ。25歳から東京で週休5日の隠居生活を始め、年収100万円以下で6年間暮らす。現在は台湾に移住し、海外でも隠居生活ができるのか実験中。本連載を大幅加筆・修正した最新刊は、7月3日発売。既刊に 『20代で隠居 週休5日の快適生活』『年収90万円で東京ハッピーライフ』

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  1. 【こんな時間ですが公開しました】気がつくと増えてしまうのが人間関係です。 落ち着いた生活を取り戻す おまけ-人間関係の強制リセット法 https://t.co/dB0cwARBdL

  2. 連載更新されましたー
    これみんなが携帯もってる時代ならではの人間関係リセット法だなーと思う。↓
    https://t.co/aWdRAlR9MN