電気グルーヴ01-バカなヤングはとってもアクティブ それを横目で舌打ちひとつ

2018年08月13日 夕方公開終了

文=T.V.O.D

パンス さて……前回予告したとおり、これから電気グルーヴの話を始めたいと思います。
そもそも、彼らについては多くの人が語っているけど、「~論」っぽいのは意外に少ないような。パッと思い浮かばない。と、僕からは見えるんだけど、どうですかね?

コメカ 電気グルーヴはこれまでのキャリアを通して、常に自分たち自身をものすごく冷静かつ客観的に見ているから。正面から論じることが意外に難しいというか、電気自身が語る電気グルーヴ像が一番的確な電気グルーヴ論になる、ってパターンがほとんどなんだよな(笑)。近年は「おもしろおじさん」みたいなキャラクター設定をつくっているけど、そういうセルフプロデュースが本当に上手い。老年になってからのビートたけしの自己キャラクター設定の上手さに匹敵すると思う(笑)。

パンス うんうん。すごいよね。っていうと話が終わってしまうんだけど (笑)。こう、ボンヤリした言い方になっちゃうけど、受け取る側も所与のものとして「そこにある」認識になってるように思うのよね。それは彼らのパーソナリティだけでなく、周りの環境ーーファンダムや、彼らを取り囲む文化表現によって巻き起こっていたのではないか、という気がしてる。そういう意味で「YMO環境」も同様だったんだろうけど。

コメカ 90年代に電気グルーヴが作り出した環境や物語というのは、前回のフリッパーズ・ギターに匹敵するぐらい、日本のサブカルチャー史においてインパクトがあるものだったと言える。ただ、さっき言ったように近年の彼らはすごく上手くキャラクターをスイッチングしていったから、いま10代ぐらいの子にはあんまりかつての彼らの物語に実感が沸かないかもしれないけど。……でさ、電気グルーヴの軌跡というのは、鬱屈した自意識過剰の「オトコノコ」がどのように生きるか、という問題に関わる話だと思うんだよね。

パンス 「オトコノコ」か~。もうちょい説明してほしいな。

コメカ 「N.O.」って曲の歌詞に「馬鹿なヤングはとってもアクティブ それを横目で舌打ちひとつ」ってフレーズがあるんだけど、90年代初頭にこういう感覚をコトバにしていたポップミュージシャンの代表格のひとつが、電気だったと思うのね。尾崎豊的な「大人たちへの反抗」みたいな感覚じゃなくて、世間のマジョリティの雰囲気や陽気さに対する苛立ちを歌う感覚っていうか。マジョリティに属さないようなマイナーなインディバンドとかだと、もっと極端に過激な方向に行ってしまったりするんだけど、電気の言葉は普通の若者に届く形だった。で、どういう若者に届いたかと言うと、自意識を持て余した野郎どもだった、っていう。まあもちろん女性ファンを中心としたアイドル的な人気も持っていたわけだけど、鬱屈したモテない男たち…「オトコノコ」たちのヒーローになったところがあったというか(笑)。

パンス あー、やり切れない自意識みたいなのを歌うってのはTheピーズなんかもそうだったと思うけど。「N.O.」のもとになったタイトルは「無能の人」だしね。1989年リリース『662 BPM BY DG』収録。でも電気グルーヴ的にはNew Order的なアプローチだったわけだよね。あくまでもポジティブな転身の記録というか。それまでいたインディ・シーンが内包していた極端さを一旦置いといて、同時代に届く歌を作ったという流れだよね。

コメカ うん、電気は1989年結成で、「N.O.」は前身バンドの人生が解散した頃のことを歌った曲。人生は徹底的に無意味な歌詞を歌うグループで、代表曲の「オールナイトロング」は「金玉が右に寄っちゃった オールナイトロング」というワンフレーズしかほぼ歌詞が無い(笑)。いかにも80年代インディーズ的なナンセンス感覚のグループだった人生から電気グルーヴへの移行には、「N.O.」のような自意識や、「電気ビリビリ」のような攻撃性を備えたグループへの転身という側面があった。当たり前だけど当時はまだ2ちゃんねるのようなメディアも存在しなかったわけで、こういう「ホンネ」みたいなものを剥き出しにしだグループが登場してきたことにはインパクトがあったと思うんだよね。Theピーズとか、同時期のエレファントカシマシみたいなロックバンドに近い部分もあったと思う。

パンス 生活』とかね。ある種反時代的な志向があったと思う。Theピーズみたいなバンドもそうだし、同時期に生まれたマンガ表現がより分かりやすいと思う。新井英樹とか。バブル期のソフィスケートされた生活に反抗して、ゴリっとした、古典的な肉体性みたいなものをフィーチャーする。時が経って、「リア充」みたいな便利な言葉も生まれることで、対立構造がはっきりさせられていくわけだけど(笑)、この時期が端緒だったかな~と思う。ただまあ、電気グルーヴの場合「N.O.」にいま言ったような側面を覗かせているけど、さらに複合的なアプローチをしていた。ロックバンドじゃなかったっていうのも大きいかな、と思うけど。

コメカ ちょうど電気が結成してしばらくした頃が、バンドブームが終わりヒップホップやハウスが徐々に注目されるようになった時期だった。スタート時の電気はポップ・ウィル・イート・イットセルフや、マッドチェスター系のバンドに影響を受けたグループだったわけだけど、ここまで話してきたような世界観を、エレクトロニック/サンプリングサウンドの上で展開するグループは他にいなかった。そういう特異性や時流の追い風も相まって、彼らは91年にアルバム『フラッシュ・パパ』でメジャーデビューする。で、同じく91年に、「オールナイトニッポン」のパーソナリティになるんだよね。この番組の存在が、それこそ「電気グルーヴ環境」みたいなものをつくっていくことになる……(笑)。(つづく:8/13更新、電気グルーヴ02「がんばったってダメだって 努力をするだけ無駄だって」)

T.V.O.D.(てぃーゔぃーおーでぃー)

毎週土曜日、tumblrで政治や文化についての記事を更新しているテキストユニット。URL https://tvod.tumblr.com こめか/1984年生まれ。サブカルチャーや戦後民主主義が好き。テクノポップバンドmicro llamaのメンバー。Twitter @comecaML ぱんす/1984年生まれ。地図と年表を見るのが好き。Twitter @panparth

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  1. “彼らについては多くの人が語っているけど、「~論」っぽいのは意外に少ない” https://t.co/nmOUorE0yq 音楽誌が書かないJポップ批評シリーズにもフリッパーズと違って取り上げられなかったみたいだ / “電気グル…” https://t.co/ehQFcH0YRP

  2. ANN聴いてた当時(高校生)もいまも、卓球ってすごく頭のキレる人だとおもっていて、
    頭がキレてセンスのいい男子に対する無力感をいまだに引きずってるよなぁ……と反省しているところ。

    電気グルーヴ01-バカなヤングはとってもアクティ… https://t.co/nTBJrz3v9e

  3. これ面白い。2018年08月13日 夕方公開終了らしい。

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  4. 電気グルーヴ01-バカなヤングはとってもアクティブ それを横目で舌打ちひとつ https://t.co/nouxQz3eAj

  5. 電気グルーヴ01-バカなヤングはとってもアクティブ それを横目で舌打ちひとつ https://t.co/aUluM4epV5 VITAMINのリリースから四半世紀経つという事実

  6. 電気グルーヴ01-バカなヤングはとってもアクティブ それを横目で舌打ちひとつ https://t.co/TRQi4fqXSk

  7. 電気グルーヴ01-バカなヤングはとってもアクティブ それを横目で舌打ちひとつ https://t.co/fGR8qM7oFt

  8. 電気グルーヴ01-バカなヤングはとってもアクティブ それを横目で舌打ちひとつ https://t.co/OFI2sATnWE 08月13日 夕方公開終了

  9. それを横目に舌打ちひとつ、してるくらいだったら僕は電気になるしかなかったかな。ウジウジ固まっているのも嫌いだったなあ。指先が膿んできそうで

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