お金に対する見方・考え方の変化 04-個人と社会の豊かさを両立させる

2018年06月19日 夕方公開終了

文=大原扁理

お金の不安がなくなっていくにつれて、豊かさに対する考え方も変わっていきます。

都心で働きまくって経済的に余裕がなかった頃は、豊かさというのは自分だけのことでした。何よりもまず自分が豊かになって金銭的に苦しい状態から抜け出したいと思っていたし、他人のことはどうでもよかった。

ところが隠居を始めてから、私の銀行口座には、少ないながらも当面必要なぶんだけのお金がいつもありますし、欲もないので自分のためだけに使おうとしても限界があります。

それで、自分がある程度豊かになったのなら、それ以上のことは、必要な誰かのためにも使えないか? と常に考えて行動するようになりました。
といっても、もとが年収百万円ですから、大した金額ではないのですが……。

たとえば直接的なことで言うと、私はコンビニなどで募金箱を見ると、財布に小銭があれば必ず入れます。これは自分以外の誰かのためにお金を使うときに、一番身近で、簡単な方法です。ただ私は、募金しているところを他人に見られるのがどうも恥ずかしいので、流れ作業のようにささっとさりげなく入れるようにしています。だから駅前で子どもたちが持っている募金箱に入れるみたいなのは、募金はしたいけど目立ちたくないので、早歩きでスルー。

それから、お金がないときは、人にささやかなおみやげを持って行くのも、自分でスコーンを焼いてラッピングしたものを差し上げたりしていましたが、今では高くないものなら何かを買う余裕もあります。

あとはここ数年のマイブームなのですが、歳末が押し迫ると、その年お世話になった人たちに年末ジャンボ宝くじを配る、ということをしてました。遠くに住んでる人には、クリスマスカードに同封して送ることも。数年続けてみたら超楽しかったので、最近では宝くじをいつも持ち歩くことにしています。

これがちょっとしたお礼にすごく重宝するんです。他人に何かしてもらったとき、お返しに渡しやすいし、もらうほうも受け取りやすい。
現金だとこうはいきませんが、一枚三百円の宝くじならまあいいか、という感じで気楽にもらってくれる人が多いんです。それに結果が発表されるまでは、抽選のことを考えると、私も相手も日常にウキウキする瞬間が増えます。当たったら何に使おうかな、と考える楽しみは、誰にも経験がありますよね。
宝くじと一口に言ってもたくさんありますが、私の場合、お世話になった人にできるだけまんべんなく当選してほしいので、集中的に大きく当たる「ジャンボ」よりは、少しずつでも広く当たる「ジャンボミニ」を愛用しています。昨年末は、さらに当選者の数が多い「年末ジャンボプチ」というのが売っていて、それを配り歩きました。
連番とバラはお好みで、どちらでもいいと思いますが、私はなんとなくバラを買っています。連番は前後賞が出たら当選金が集中するので一攫千金的ですが、少しずつでもいいからたくさんの方に当たってほしいという私の希望と合わないからです。
また、ジャンボ系のくじは季節によって売っていない時もあるので、最近はスクラッチくじを買うことが多いです。スクラッチくじなら抽選日がないので寿命が長く、余ることがないし、人に渡したらその場で削れて結果が見れるのも楽しいですしね。
何度も宝くじ売り場に足を運ぶのが面倒なので、枚数は十枚単位でまとめて買っています。

間接的なことでいうと、目先の損得よりも、いま私が使ったお金がどんなふうに社会に還元されていくのか、ということを考えて使うようになりました。

隠居する前までは、ただ自分が一円でも安く買い物ができればそれでいいと思っていたのですが、今はディスカウントストアで安売りセールのお米よりも、国産の自然栽培で育てた玄米を、生産者からなるべく近い形で買いたいと思うようになりました。これは、頑張っている農家に応援の気持ちを届けたいからです。どこでどんなふうに作らせたかわからないものを一円でも安く手に入れるよりも、生産者にきちんとフェアな対価を払って受け取ることのほうがいまは大事。そうした農家が続いてくれると、質の良い食材にアクセスできる選択肢がみんなにある状態になります。それはとりもなおさず、自分が良いものを手に入れることができるシステムにも貢献することです。

こんなふうに全体的に考える癖がつくと、目先の安さを追いかけなくてもよくなって、非常にラクです。

自分以外のためにもお金を使う余裕がいつもある、という快適さを知ることができたのは、隠居の果実という感じがします。

金額の多寡は問題ではなくて、同じお金を使うなら、私ひとりだけが幸せになるよりも、百人が幸せになる使い方のほうが、全体的に見ればお得じゃないですか。どうすればひとりでも多くの人が幸せになるか、という視点ができたことは、低所得生活をさらに豊かなものにしてくれたと思います。

少ないお金で、幸せを最大化することをいつも考えるようになると、自然と自分が今ここで使ったお金が、社会にどんなふうに影響していくのかを知りたくなります。傍からは自分のためだけに生きているように見えるかもしれませんが(実際、最初はそれでよかったのですが)、現実にはお金を使う度に、この世界に対する興味が日々ムクムクと湧いてくる。

偶然だとしても、自分がお金の不安から解放された出来事に遭遇したなら、その方法や経緯を独り占めしておくのはもったいない。自分が発見した豊かさはどんどんシェアして、これで解決することがあるなら利用してほしいと思うのが人情です。自分が豊かなったら、次は周りにも豊かになってほしい。これは欲の少ない私の、新しい欲と言えるかもしれません。

大原扁理(おおはら・へんり)

1985年愛知県生まれ。25歳から東京で週休5日の隠居生活を始め、年収100万円以下で6年間暮らす。現在は台湾に移住し、海外でも隠居生活ができるのか実験中。著書に 『20代で隠居 週休5日の快適生活』『年収90万円で東京ハッピーライフ』

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    年収低いけど、少ないお金でも幸せを最大化することはできちゃうもんね。という話です。
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